2024/07/03 19:08

こんにちは。Jwatchman髙橋です。


新入荷商品のご案内と深堀を行います!


スイスの時計メーカー、エテルナの時計が入荷しました。
1950年代後期に製造されたモデルで、コンチキのモデルネームが付与されています。

そもそも「エテルナ」というメーカーをご存知ではない方が多いのではないでしょうか?
それもそのはず、エテルナというメーカーはかねてより日本ではマイナーなメーカーでした。

エテルナの創設は1856年にまで遡ります。以来、懐中時計、腕時計問わず世に送り出してきました。

メーカーを有名にした出来事が、1947年に実施された大規模な人類学的調査「コン・ティキ号の航海」です。

この調査では、太平洋に浮かぶポリネシア地域の祖先は、アジア系ではなく、南米からやってきたという「南米渡来説」を検証するために実施されました。

実験に使用されたのは、当時の図面から作り上げた木造いかだ。参加したのはThor Heyerdahl(トール・ヘイエルダール、人類学者)をはじめとするノルウェー人6名。

いかだは動力を持たず、海流に乗り、調査開始から102日後にポリネシア付近の環礁で座礁。海流で到達することが可能であることが判明し、結果として「南米渡来説」は立証に近づきました。

この調査に使用されたのが、エテルナの時計でした。

当時、メーカーが世界的な挑戦に対して腕時計を貸与、その性能を実地で調査することが流行となっていました。

特に、プロフェッショナル向けの時計を開発しているメーカーにその傾向は強く、ロレックスやロンジンはこぞって公の調査活動に貸与を行っていました。

100日以上に渡って海上で使用されたエテルナの時計は本社に送られ、調査されましたが、動作は全く問題なし。製造時の精度や耐久性を有していたとされ、その強靭さを実力で示しました。

また、第二次世界大戦中(WWⅡ)には、イギリス軍の官給腕時計としてエテルナも供給を行っていました。その後、1960年代、初期のイスラエル国防軍(IDF)向けに特注のスーパー・コンチキが供給されるなど、極限の状態で用いられるプロフェッショナル向けの腕時計としての地位を確固たるものにしました。

↑ケースバックにコン・ティキ号のエッチング

「コン・ティキ号の航海」で使用されたエテルナの時計を記念し、リリースされたのがこのエテルナマチック・コンチキです。

エテルナは、コンチキをフラッグシップとして据えていたようで、新機構であるエテルナマチックを初期から搭載、当時としては堅牢な防水ケースを有する傑作モデルとして名を刻んでいます。


今回ご紹介の個体は、1959年製造のコンチキ。

当時としては大型の35.5㎜径のケースを有する個体で、主に北ヨーロッパ向けに多く製造されていたものと考えられます。

↑現代においては一般的なボールベアリング式ローター、発祥はエテルナ

機械はボールベアリング式自動巻き、cal.12xx系機械の後継機であるcal.1426uを搭載しています。


ラグを含むケース縦のサイズは45㎜程度と数値上は大きく見えるものの、実際にはラグ部分が下方に湾曲しているため、腕にした際の装着感の良さは数値上の大きさを感じさせません。


ケースの形状も当時としてはかなり先進的な一体型ケース。また、ケース自体も薄型の機械のおかげでスリムに仕上がっています。


文字盤は中央から外周に向けて筋目が走る「サンレイ仕上げ」。1960年代より使われ始める技法で、上品でありながら、しっかりとした表情を見せることを可能にしました。

この個体に用いられている「サンレイ仕上げ」は比較的目が細かく、後年のものと比べると滲み出るようなしっとりとした輝きを放つのが魅力です。

↑KonTikiの文字は手書き感が可愛らしい

針とインデックスはシルバーであるものの、針部分が若干ゴールドに変化していることから、実際はホワイトゴールドのようです。

針をゴールド素材で作ることで、美観の保護だけではなく、錆びを防ぐという機能的な側面も有します。当時は、オーバーホール(分解清掃)の度に交換していたというのだから驚きです。


ヴィンテージウォッチにしては、サイズが大きめな個体ではあるものの、その大きさは耐久性や防水性を獲得するためのもので、決していたずらに大きいというわけではないのがミソ。まさに機能美という言葉が似合う一本。

店主は自前のエテルナマチックが好きで、色々調べていましたが、今回は初めてコンチキについてそのバッググラウンドを明らかにしてみました

ロレックスで言うところの「エクスプローラー」、オメガで言うところの「シーマスター」に匹敵する名作だと改めて感じました。やはりエテルナは愛せます。